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木質素材の熱化学還元処理をわかりやすく解説
⑥高温乾燥材の真実 “木質素材の熱化学還元処理をわかりやすく解説しよう”の②で紹介した高温乾燥材について内部割れの欠陥を指摘しておいたが、材質の面ではどうなのかを含水率、収縮率の面からチェックして見た結果をお見せしよう。 米松(ダグラスファー)のドライビーム(正角材)4本について表面割れの有無を調べると共にJIS規格試験用サンプルを所定の部位から夫々10個作成し、比重、含水率、収縮率を求め、表に夫々10個の平均値で示した。 ドライビームは高温処理で材表面をドライングセットさせ、表面割れを抑える目的で処理されているが、実際は小割れが発生していることが分かる。一番大きな問題は、内部割れ(ミカン割れ)が発生していることである。最近はかなり改善されているようであるが、表に示したように、含水率も平衡含水率(気乾含水率)を超えているばかりか、収縮率はほとんど改善されていない。 このような材料が我国の建築業界を席巻している現実は住宅を購入する消費者のほとんどわかっていない。ミカン割れの柱で枘(ほぞ)を作ると枘の部分に割れが入っているので強度が保てない。これを補

野村隆哉
2025年12月14日


木質素材の熱化学還元処理をわかりやすく解説
⑤水分除去(乾燥)では形状寸法を安定化出来なかったオイルパームの材組織をどのようにすれば固定できるのだろうか?続編 上図は、オイルパームの材組織中の糖類が熱化学還元処理によって変化している証拠を示すものです。この実験結果は東京農業大学の教授をしておられた林隆久氏の協力で行なったものですが、CとFが熱化学還元処理後の材中の糖を示しています。 St(無処理)と比較していずれの糖も明らかに減少していることが分かるでしょう。 これらの糖類が熱分解してしまえば、前回お見せしたようにオイルパームの材組織が変形してしまうでしょうが、処理後の材の形状を見ても明らかなように樹脂化して組織を固めたことが分かるでしょう。その結果、下図に示すように処理材の強度は明らかに増加します。 この実験はオイルパームの材組織にそれぞれ種類の異なる糖類の溶液を含浸させた後熱化学還元処理を行い、処理後の物性を無処理材と比較したものです。 図から明らかなように、無処理材(×)および組織から予め糖を除去した処理材(○)と比較して熱化学還元処理した材は、糖を加えたものも加えないものも明らかに

野村隆哉
2025年12月14日


木質素材の熱化学還元処理をわかりやすく解説
④水分除去(乾燥)では形状寸法を安定化出来なかったオイルパームの材組織をどのようにすれば固定できるのだろうか? 前回、私の予想が当たって見事に形状・寸法安定化したオイルパーム材の写真をお見せしましたが、今回から、いよいよ熱化学還元処理の佳境に入っていきましょう。 木質材料の組織を物理化学的に固定する方法は、これまで色々の手法があります。物理的な方法としては、材をそのまま圧縮したり樹脂を含浸させてから圧縮する方法。化学的な手法では、アセチル化やホルマル化等化学修飾と呼ばれる技術があります。しかし、これらのいずれも天然の木材素材そのものの機能を損なうばかりか製造コストが上がるだけでなく、有害な薬品を使用するためおすすめできる手法ではありません。 最近話題になったケボニー化(黒檀の英名であるエボニーをもじって化学処理によって固化させるのでケボニーと名付けられたようです。)という木材を固化する手法も40年も以前に分かっていた技術ですが、フルフリルアルコールという物質を木材に含浸させ、材中でこれを重合させフラン樹脂を作るという技術です。フラン樹脂は優れた樹

野村隆哉
2025年12月14日


木質素材の熱化学還元処理をわかりやすく解説
③木材乾燥神話は本当だろうか? 写真はオイルパームというヤシの仲間で、この幹を製材後人工乾燥して水分を除去すると、ものの見事に変形してしまいます。そのため、木質材料として使うことが出来ず、マレイシア、インドネシアを合わせると現在では年間1億立米もの膨大な量の幹が捨てられています。私は、2000年に当時のマレイシア首相だったマハティールさんの依頼でこの幹の廃材を何とか有効利用する道を開くための研究をはじめ、当時在籍していた京都大学木質科学研究所で基礎実験に取り掛かりました。幹の組織の最大収縮率が48%にも達する厄介な材料をどのようにして寸法安定化させるかをいろいろ模索した結果、幹を構成する細胞組織を物理化学的に固定させる方法を見つけなければならないという結論に達しました。製材して水分を抜く乾燥方法ではだめだというのは分かっていますから、それならば、確りした樹皮で保護されている幹を樹皮付の丸太のまま処理することで組織を固定出来ないかと考えたわけです。その結果が下の写真です。 お分かりいただけたでしょうか。 次回から熱化学還元処理技術について更に詳し

野村隆哉
2025年12月14日


木質素材の熱化学還元処理をわかりやすく解説
②木材乾燥神話 私達が色々の種類の木材を種々の生活用材として用いるためにまずやらなければならないのは、木材の形状・寸法安定化です。 ご存知のように、木材はその元となる樹種によって組織構造が異なり、それが育っていた環境や樹歴によって複雑な内部構造を作り上げています。 この内部構造の履歴が、木材を用材として用いる際に、反ったり、曲がったり、捻じれたり、割れたりといった欠点を生ずる原因となります。 これまで、先人たちはこの欠点を取り除くためいろいろ知恵を絞ってきたのですが、その一つが木材中の水分を取り除くことでした。製材後、長年自然乾燥することで水分が抜けて行き、材が安定することを見つけたのでしょう。この水分除去、即ち乾燥が木材の形状・寸法安定化の唯一の方法であるという神話になってしまいました。その後は、如何に早く水分除去するかという技術ばかりが主流となって、含水率を下げさえすればよいという時代になってしまいました。厳密に規格化された工業製品と競争するためにしゃにむに寸法安定化を進めてきた結果、高温乾燥処理が主流になり、写真に示すような表面は割れていな

野村隆哉
2025年12月14日


木質素材の熱化学還元処理をわかりやすく解説
①植物と動物の違いって何だろう 「解りきった質問をするな。」と叱られそうですが、一般的な見た目からではなく、植物と動物の本質的な違いは、化学的な役割で大雑把に分けると、植物は空気中の炭酸ガスを吸収して酸素を排出。動物はその酸素を吸収して炭酸ガスを排出しているということです。植物と動物が共同し、地球上の炭酸ガスと酸素の量のバランスを作り出していたのです。 大気中の酸素や炭酸ガスが1%増えるだけで、私たち生物が生きている生存圏は壊滅的な変化に見舞われます。植物が炭酸ガスを固定してくれているおかげで、私たちは安心して生きていられることを忘れないでいただきたいと思います。私たちが生きていくためには、木材を利用しなければなりませんが、せっかく炭素を固定してくれている材料を単なる金儲けのためにバラバラにして利用するのはもっての外でしょう。木質素材をなるべく手を加えないでそのまま利用することがこれからの脱炭素社会に求められていることではないでしょうか。

野村隆哉
2025年12月12日
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